ツミとバツ

8月は、ドストエフスキー罪と罰』(ASIN:4003261356)を読みました。

10ページ先で何が起こってるかまるで予測がつかない、ジェットコースター小説でした。読む前の印象とあまりにも違いました。もっと重くて暗くて長くて、途中で飽きるかと思ってた。

いや、実際、重くて暗い話なんですけど、でも読んでる時の感じは軽かったです。スリリングでスピーディで、どん底に不幸なシーンで笑わせるっていう。

いまAmazonみてたら、新潮文庫の(ASIN:4102010211)にくらべて重厚感なさすぎとか書いてあったので、そのうちそっちも読みます。

180 :吾輩は名無しである :02/10/19 02:51
おれは【罪】を読むから、おまえは【罰】の方を読め

惨殺って「ざんさつ」って読むのか……。「さんさつ」だと思ってた。むちです。

新潮文庫の分(工藤精一郎訳)・岩波文庫の分(江川卓訳)、どちらも、甲乙つけがたい名訳。
岩波文庫の分(江川卓訳)は、訳がやや荒削りでくせがあるかもしれないが、『罪と罰』の小説世界の雰囲気をうまく伝えている。新潮文庫の分(工藤精一郎訳)はくせがなく、すらすらと読みやすい。

あと、羽海野チカハチミツとクローバー』(ASIN:4088650794)3巻まで読みました。近所の本屋に4巻売ってなくて悲しい。

『罪と罰』 惨殺シーン比較

面白かったので、表にしてみました。犯人は誰だ!? (ラスコーリニコフです。)

中村白葉訳(旧・岩波文庫 米川正夫訳(旧・新潮文庫 江川卓訳(新・岩波文庫 工藤精一郎訳(新・新潮文庫 池田健太郎訳(中公文庫) 北垣信行訳(講談社文庫) 小沼文彦訳(筑摩書房
もはや一瞬の猶予もゆるされなかった。 もう一瞬も猶予していられなかった。 もう一瞬の猶予もならなかった。 もう一刻の猶予もならなかった。 もはや一瞬の猶予もならなかった。 もはや一刻の猶予もならなかった。 これ以上もう一瞬の猶予も許されなかった。
彼は斧を全部抜きだすと、 彼は斧をすっかり引き出すと、 彼は斧をすっかり取りだし、 彼は斧をとり出すと、 彼はすっかり斧を取り出して、 彼は斧を抜きとると、 彼は斧をすっかり抜き出すと、
それを両手で振りかぶって、辛うじて自分を感じながら、 はっきりした意識もなく、両手で振り上げた。 なかば無意識のうちに両手でそれを振りかぶると、 両手で振りかざし、辛うじて意識をたもちながら、 ほとんど無意識のうちに両手で振りかぶると、 ほとんど意識ももうろうとしながら、斧を両手に握ってふりかぶり、 おぼろげな意識で、両手で大きくそれを振りかぶった。
ほとんど力を入れずに、ほとんど機械的に、 そして、ほとんど力を入れず機械的に、 ほとんど力をこめず、ほとんど機械的に、 ほとんど力も入れず機械的に、 ほとんど努力もせず、ほとんど機械的に、 ほとんど無意識に、ほとんど機械的 そして、ほとんど無造作に、ほとんど機械的に、
背の方を下にして頭の上へ打ちおろした。 老婆の頭上へ斧のみねを打ちおろした。 頭をめがけて斧の峰をふりおろした。 斧の背を老婆の頭に振り下ろした。 老婆の脳天めがけて斧の峰を打ちおろろした。 斧のみねを脳天に打ちおろした。 頭をめがけて峰打ちにさっと振り下ろした。
その時、彼には力が少しもないようであった。 そのとき力というものがまるで無いようだったが、 そのときは、まるで力がなくなってしまったようだった。 そのとき力というものがまるでなかったようだったが、 まるで力が抜けたみたいだった。 そのときはまるで力が抜けたような感じだった。 そのときは力などまるでないようだった。
が、一度斧を打ちおろすやいなや、 一たび斧を打ち下ろすや否や、 だが、一度斧をふりおろしたとたん、 一度斧を振り下ろすと、 ところが、ひとたび斧を打ちおろすと、 が、ひとたび斧を打ちおろしたとたんに、 だが一度斧を振り下ろすやいなや、
彼の身内にはたちまち力が生じた。 たちまち彼の身内に力が生まれて来た。 彼の身内には新しい力が湧いてきた。 急に彼の体内に力が生れた。 たちまち体じゅうに力が生まれてきた。 力がわいてきた。 たちまちその身内に力が湧いてきた。