喜びと憎しみ

デトロイト在住のお義父さんが言ってた話なんだけど、彼の近所のイラク人の家族が家を売り払ったらしい。フセイン政権が倒されたからイラクに帰るんだって。お祭り騒ぎだったDearborn(デトロイト近郊の特にアラブ人口の多い市)ではどうやらそんなイラク人が少なくない様だ。帰りたくても帰る事の出来なかった彼らの喜びを、アメリカのメディアの仕業だとする反アメリカ主義(反イラク戦の人々の殆どは結局の所、反アメリカ)の人々は気が付かない振りをしてるかのよう。自分達の優越感の保護の為に。
(SAN FRANSISSYCO 2003/04/30)

午後、サドゥン大通りを黒旗をおしたてた一団が行進してきた。反米・反占領デモだった。「ダウン・ブッシュ!」とか、「イスラムの統一を!」などとシュプレヒコールを叫んでいる。パレスチナホテル前で気勢を上げているところに、米軍側は威嚇射撃で応じた。デモに参加していた初老の男性が、流暢な英語で私に向かって米国を非難するのでビデオカメラを向けたら、一瞬で別人のように「アメリカウェルカム」になってしまった。「インタヴューしていい?」と訊いたら本人が「望むところだ!」といったのに。
 戦争が終わったというのは本当なのか?さっきも銃声が立て続けに聞こえたし、今し方は戦車砲の音が何発も続けて聞こえていた。西の方にキノコ雲が上がった。それも、すぐ近くでだ。
(The Chicken Reports 2003/05/02)

圧政が去って喜んだ人もいるのだろうし、家族や友人を殺されて憎しみを募らせた人もいるだろう。一方、本当の当事者である死人たちは、何の感情も持たず、いまも引き続き死にっぱなしだ。彼らに言葉は永遠に届かない。

生き残った人々の感情によって、死人が本当に死んで良かったのかどうか言うことなんかできないと思う。